
NISAやiDeCoなど、税制優遇のある投資制度を利用して、長期投資を始めようと考えている方は多いのではないでしょうか。
その際に気になるのが、投資信託を設定・運用する投資信託会社の安定性。本当に倒産リスクはないのでしょうか?
今回は、投資信託会社の倒産リスクについて、具体的に分かりやすく解説します。
重要ポイント:投資信託会社が撤退すると、最悪の場合、含み損が実現損になる可能性があります。資産を守るためには事前の対策が必要です。
運用会社が倒産した場合の資産保護の仕組み
まず、運用会社が倒産した場合どうなるのかを見ていきましょう。
ご安心ください。保有している投資信託の組入資産自体は、運用会社ではなく受託銀行が管理しているため、運用会社の倒産による直接的な影響は受けません。
受託銀行は、投資信託の資産を自行の資産とは完全に分離して管理する分別管理を徹底しています。そのため、受託銀行が倒産した場合でも、投資信託の資産は守られます。
しかし、運用会社が倒産すると、その時点で運用の継続は不可能になります。その後の対応としては、主に2つの方法があります。
- 繰上償還: 運用を終了し、ファンドを解散。保有口数に応じて投資家に資金が返還されます。ただし、繰上償還時の価格が購入時より低い場合、含み損が実現損となります。長期保有で将来の値上がりを期待していたとしても、それが叶わなくなってしまうリスクがあります。
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運用移管: 別の会社に運用を引き継ぎます。これにより運用は継続されますが、問題点もあります。特にアクティブファンドの場合、運用会社の投資哲学や運用担当者のスキル・ノウハウなども含めて移管することは不可能です。
- インデックスファンドは、ベンチマークが同じであれば、どの運用会社が運用しても大きなパフォーマンスの差は出にくい傾向があります。
- 一方、アクティブファンドは運用者の手腕に大きく左右されます。そのため、運用会社が変わると、同じ投資対象でも全く異なるファンドになってしまう可能性があり、パフォーマンスに影響が出るリスクがあります。
このように、運用会社が倒産しても組入資産に直接的な損失はありませんが、繰上償還や運用移管にはそれぞれメリット・デメリットがあることを理解しておく必要があります。
運用会社の倒産は本当にない?事業撤退の可能性とリスク
では、実際に運用会社が倒産する可能性はあるのでしょうか?
これまで、国内大手金融機関の子会社や外資系運用会社の日本法人が運用会社として事業を展開しているケースが多く、親会社の資本力やブランド力に支えられて倒産は稀でした。また、法人や機関投資家からの資金運用も受託している運用会社は、投資信託以外の収益源があるため、事業継続の体力があるとされています。
しかし、個人向け投資信託に特化し、法人・機関投資家からの資金運用を行っていない独立系投資信託会社は注意が必要です。運用資産規模が小さく、今後の成長も見込めない場合は、倒産とまではいかなくても事業撤退の可能性があります。
PayPayアセットマネジメント撤退の事例
実際に、業績悪化を理由に2024年10月11日、PayPayアセットマネジメントは2025年9月末を目途に事業を終了することを発表。
撤退の主な理由:
- 運用資産の拡大が計画通り進まず
- 個人投資家向け市場での競争激化
- 新規顧客獲得の難航
- 持続的なサービス提供が困難と判断
投資家への影響と対応:
- 運用中の投資信託は他社への運用移管を予定
- 受益者への影響を最小限に抑える措置を実施
- 具体的な手続きや対応について今後詳細を発表予定
このケースを皮切りに、他の運用会社でも同様の動きが出る可能性は否定できません。
投資信託を選ぶ上でのポイント
運用会社の財務状況をチェック! NISAなどを活用した長期投資を行う際は、ファンドの運用成績だけでなく、運用会社の財務状況も確認することが重要です。
以下の指標を中心にチェックしましょう:
- 自己資本比率:経営の安定性を示す重要な指標
- 営業収益の推移:事業の成長性や安定性を確認
- 運用資産残高:一定規模以上あることが望ましい
多くの運用会社は非上場企業ですが、近年はホームページで財務諸表を公開している会社も増えています。これらの情報を活用し、信頼できる運用会社を選びましょう。
運用会社のタイプ | 特徴 | リスク評価 |
---|---|---|
大手金融機関の子会社 | 親会社の資本力に支えられている | 低リスク |
外資系運用会社(日本法人) | グローバルブランドの一部 | 中〜低リスク |
独立系運用会社(大規模) | 機関投資家からの受託もある | 中リスク |
独立系運用会社(小規模) | 個人向け特化、資産規模小 | 高リスク |
まとめ
投資信託会社の倒産・撤退リスクに備える3つの対策
- 運用会社の財務状況をチェック:自己資本比率や営業収益の推移、運用資産残高を確認
- 分散投資を心がける:複数の運用会社の商品に投資して運用会社リスクを分散
- アクティブ・パッシブの使い分け:運用会社リスクを気にするならインデックスファンドを主軸に
投資信託会社の倒産時でも、分別管理により投資資産は守られますが、繰上償還または運用移管が行われるとそれぞれにリスクが存在します。運用会社の倒産は稀ですが、PayPayの事例のように事業撤退の可能性はゼロではありません。特に独立系運用会社は注意が必要です。
長期投資を行う際は、運用会社の財務状況も確認することが重要です。投資信託を選ぶ際には、これらの情報を参考に、ご自身の投資スタイルやリスク許容度に合わせて慎重に判断しましょう。リスクを最小限に抑えるためには、専門家のアドバイスを受けることが効果的です。
少しでも疑問がある場合、専門家に相談することでより良い選択ができるでしょう。