建築費高騰!マンション買えない時代の幕開け

近年、日本の住宅市場は大きな転換点を迎えています。建築費の継続的な上昇がマンション価格を押し上げる一方で、多くの人々が住宅購入を断念し、賃貸住宅にとどまる選択を余儀なくされています。この現象は単なる一時的な市場変動ではなく、住宅に対する考え方そのものを変える構造的な変化として注目されています。

建築費が過去最高を更新:上昇の背景を探る

建設物価調査会が発表した最新データによると、2025年5月の東京地区におけるマンション(鉄筋コンクリート造)の建築費指数は137.2を記録し、前月比1.0%上昇して過去最高を更新しました。この数値は2015年を基準値100とした指数であり、約37%もの建築費増加を意味する深刻な状況です。

生コンクリート価格の急激な上昇

建築費高騰の最大の要因として、生コンクリートの価格急騰が挙げられます。東京地区における生コンクリートの取引価格は、1立方メートルあたり24,800円となり、従来価格と比較して3,000円(約14%)という大幅な値上がりを記録しています。

この価格上昇の背景には、複数の要因が複合的に作用しています:

  • 原材料費の高騰: 生コンクリートの主要原材料であるセメントは、大手メーカーが設備投資費などの上昇を理由として値上げを実施
  • 骨材価格の上昇: 強度向上のためにセメントと混合使用される骨材(砂や砕石)も同様に価格が上昇
  • 深刻な人手不足: 生コンクリートを工事現場に運搬するミキサー車の運転手不足が慢性化し、人件費が膨張

建設業界全体への波及効果

マンション以外の建築物においても、建築費指数は軒並み過去最高を記録しています。オフィスビル(鉄骨造)は前月比0.4%高の137.0、工場(同)は0.5%高の135.7、住宅(木造)は0.3%高の141.5となり、建設業界全体が高コスト構造に直面している現状が明らかになっています。

一方で、鉄筋コンクリートに使用される異形棒鋼は需要の弱さから値下がりが続き、銅価格の下落による電線・ケーブルの価格低下も見られますが、これらは建築費全体の上昇を抑制するには至っていません。

賃貸市場の異変:分譲マンション賃料が4ヶ月連続最高更新

建築費高騰がマンション価格を押し上げる中、賃貸市場でも前例のない変化が起きています。東京カンテイの発表によると、2025年5月の東京23区における分譲マンション賃料は、1平方メートルあたり4,692円と前月比1.8%上昇し、2004年1月の調査開始以来の最高値を4ヶ月連続で更新しました。

築浅物件が牽引する賃料上昇

東京23区の賃料上昇は6ヶ月連続で続いており、過去1年間での上昇率は9%に達しています。この急激な上昇の主要因として、築浅物件の供給増加が挙げられます。

築年数5年以内の築浅物件は、設備の新しさや利便性の高さから、高い賃料設定でも借り手を見つけやすい特徴があります。実際、東京23区の築年数5年以内の物件賃料は、2025年に入ってから1,000円以上の大幅な上昇を記録しています。

特に港区を中心とした都心部では、築浅の高級物件の供給が顕著に増加しています。これは、マンション価格の高騰により住宅購入が困難になった層の需要を見込んだ投資家が、築浅の高級物件を積極的に賃貸市場に供給し始めたためです。

首都圏全体の動向

首都圏(1都3県)全体では、人事異動などによる引っ越しシーズンを過ぎたことで、賃料上昇にやや一服感が見られます:

  • 神奈川県: 前月比0.3%高の2,797円
  • 埼玉県: 1.2%高の2,212円
  • 千葉県: 1.5%高の2,110円

しかし、専門家は首都圏の賃料が今後も高水準で安定して推移すると予測しており、大幅な下落は期待しにくい状況です。

住宅市場の構造的変化:新たな住まい方の模索

現在起きている現象は、単なる価格変動を超えた構造的な変化として捉える必要があります。建築費高騰によるマンション価格上昇と、それに伴う購入困難層の賃貸市場への流入は、日本の住宅市場に新たなパラダイムをもたらしています。

投資家行動の変化

特に注目すべきは、投資家の行動変化です。従来の賃貸投資とは異なり、住宅購入が困難になった中間所得層の需要を見込んで、築浅の高級分譲マンションを賃貸として供給する動きが活発化しています。この戦略は、賃料相場をさらに押し上げる要因となっており、賃貸市場の高級化を促進しています。

住宅選択の多様化

これまで「持ち家」が理想とされてきた日本社会において、賃貸住宅への長期的な居住が現実的な選択肢として認識されつつあります。特に都心部では、高額な住宅ローンを組むリスクを避け、柔軟性の高い賃貸住宅を選択する人々が増加しています。

まとめ:変化する住宅市場への対応

建築費の継続的な上昇と賃料の急騰は、日本の住宅市場に根本的な変化をもたらしています。生コンクリートをはじめとする建築資材の価格上昇、深刻な人手不足による人件費増加など、建築費を押し上げる要因は短期的に解消される見通しが立っていません。

その結果、多くの人々が住宅購入を断念し、賃貸住宅での長期居住を選択せざるを得ない状況が生まれています。この需要変化は賃貸市場の活況をもたらし、特に東京23区では分譲マンション賃料が過去最高水準で推移し続けています。

今後も建築費高騰の要因が解消される見通しは立っておらず、住宅市場における「購入から賃貸へ」のシフトは継続すると予想されます。この構造的変化は、私たちの住まい選びの基準や価値観を根本から見直すことを促しており、より柔軟で現実的な住宅戦略の構築が求められています。

住宅市場の動向を注視しながら、自身のライフスタイルや経済状況に合わせた最適な住まい方を見つけることが、これからの時代においてますます重要になるでしょう。

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