年代別老後資金対策完全ガイド

老後の資産準備は多くの方にとって悩ましいテーマです。日本では長く低金利が続いていますし、最近では物価上昇も重なり、十分な老後資金を準備できるか不安を感じている方も多いでしょう。この記事では、現在の経済環境を踏まえながら、年代別に具体的な老後資産準備の方法をご紹介します。

私たちの老後を取り巻く環境—低金利と物価上昇の現実

日本では、長い間低金利が続いています。そのため、定期預金などにお金を預けていても、ほとんど資産が増えないという状況が続いています。

そして、もう一つ私たちの老後に大きな影響を与えるのが物価上昇です。2023年の物価上昇率は食料品・生活用品だけで見ると約8%、全体でも約3%の物価上昇がありました。これだけ物価が上がると生活費も高くなりますので、老後の生活費はどうなってしまうのか不安も出てきます。

では今後、物価上昇はどうなっていくのでしょうか?

結論から言うと、物価上昇は今後も続く可能性が高いです。日本銀行は物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率2%と定めています。つまり、「2%ずつ物価が上がっていくのが理想」という目標を掲げているわけです。ただし、これは「予測」ではなく「目標」ですが、経済政策の方向性を考えると、この先も2%程度の物価上昇が続いていく可能性が高いと考えられます。

低金利と物価上昇によるインフレリスク

先ほど、日銀が「物価安定の目安は物価の上昇率2%が続くこと」だと目標として定めていると話しました。20年間で年率2%のインフレが続くと、今ある100万円が20年後には67万円の価値になります。この計算は以下のように求められます:

100万円×(1−0.02)^20≈67万円

つまり、せっかく老後資金として1000万円貯めても、現金で置いておけば、20年間で670万円の価値に目減りすることになります。

低金利+物価上昇の場合、資産を預金で持っていたら増えないだけではなく、目減りしてしまうリスクがあります。ですので、預貯金だけではなく、資産運用を考える重要性が増してきているのです。

年代別に見る老後資産準備

40代の老後資産準備

40代でやっておくべきことは、現状を確認して問題点を洗い出すことです。

実際には細かい老後の資金計画はこれからだとしても、すでにわかっている大きな問題点がないかをチェックしましょう。たとえば、以下のようなポイントを確認します:

  • 住宅ローンの完済はいつか
  • 退職してから年金を受け取るまでに無収入の期間が発生しないか
  • このままの貯蓄推移で老後資金がどの程度準備できるのか
  • 生命保険や医療保険、がん保険が適切か

資産運用は目的別に分けて運用する

現状を確認したら、次のステップに進みましょう。老後資金の資産運用を考える時に、投資は大事な選択肢です。投資をする場合のアドバイスとしては「運用を目的別に分けて行う」ことです。

40代ですと、老後資金だけでなく、子どもの進学資金など、他にもお金がかかるところがたくさんあります。子どもの進学資金をすべてNISAで貯めていて、入学のタイミングで大暴落が起きてしまったら大変ですよね。数年後に必要になる子どもの進学資金と、20年後30年後に必要になる老後資金とでは、リスクの許容度が変わります。教育費、住宅ローン一括返済、老後資金など、目的別に分けて投資することを考えてみましょう。

50代の老後資産準備

50代は、老後の具体的な数字が見えてくる年代です。50代になると、「ねんきん定期便」でも将来の年金額の目安がわかります。まずは年金で生活費が賄えるかどうかを確認します。

あわせて、退職金の受け取り方と個人型確定拠出年金などその他の資産の受け取り方もチェックしましょう。退職金と個人型確定拠出年金は受け取り方によって、税金が大きく変わります。自分がどの程度もらえるのか、どのような受け取り方ができるのかを確認しておきましょう。

使う時期別に分けて運用する

老後資金も、使う時期別に分けて運用すると良いでしょう。今は人生100年時代ですから、老後は30〜40年あります。60代の生活費として使うお金はすぐに使うので、あまりリスクを取った運用はできません。それに対して、80代90代で使うお金は、ある程度リスクを取った運用が可能です。

老後資金のために50代の方が今やっておくべきこととして、保有資産の金額と運用の仕方をチェックしてみてください。具体的には次のようなポイントを確認します:

  • 必要な老後資金に対して保有資産が十分か
  • リスク許容度に合わせて運用方法が適正か
  • 資産の分散がちゃんとできているか
  • インフレリスク対策ができているか

資産を預貯金で持ちすぎていたり、資産をすべて株で運用していたり、全資産を一つの商品に投資するのは、分散投資の観点からみても、あまりお勧めできません。

50代以降の方の運用対象として、債券を検討しましょう。債券は株式などに比べて、リターンも少ないがリスクも少ないのが特徴で、より安全性が高いといえます。50代からは60代以降を見据えて徐々に債券に軸足を移していくのも良いと思います。今は米国の金利が下がるといいつつ、まだ高い水準を保っており、比較的米国債への投資に有利な環境が続いています。

ですから50代の方も、分散投資を基本としつつも、先を見据えて今のうちに債券を持っておくのも、悪くないでしょう。

60代の老後資産準備

60代になると、貯める・増やすといったフェーズから、使うフェーズに入っていくことになります。60代からは上手に使っていく、減らさずに使っていくことが大切です。

60代の方がまずやっておくべきことは、資産の配分をリスク抑えめの配分にシフトしていくことです。

60代以降は、相場が暴落して、生活費が不足することが一番大きなリスクです。また、病気などで施設に入ることになり、急にお金が必要になる可能性もあります。そのタイミングで相場が暴落していると、必要な時期に資産が減っている状況になります。そのため、比較的リスクの少ない債券中心の安定運用を基本として考えることをお勧めしています。

また、徐々に取り崩す予定の資金であっても、運用しながら取り崩すことが非常に大事です。

相続を視野に入れた資産運用

もうひとつ、60代になると考える必要があるのは、相続を視野に入れた運用です。相続税は、昔はお金持ちが気にするものだと思われていましたが、今は状況が違います。

相続税の非課税枠はかなり縮小されていますので、自宅の不動産に加えて、ある程度の金融資産を持っている方は、課税される可能性が高いと考えた方がよいでしょう。相続税対策をやっているかどうかで、100万円単位で相続税の納税額が変わってくる可能性もあります。

具体的な相続対策として、以下の3つの方法が効果的です:

  1. 生前贈与の非課税枠を利用した贈与 – 毎年110万円の贈与の非課税枠を使って贈与していくことを考えましょう。60代から始めると、お子さん1人につき10年間で1100万円、20年あれば2200万円といった大きな金額を贈与することも可能です。
  2. 不動産などの評価額を圧縮できるものを運用に取り入れる – 資産を不動産に換えておくと評価額が少し圧縮できますので、投資不動産で運用益を出しつつ、相続税対策をする方法も検討できます。賃貸物件にしておくとさらに相続税評価額を下げられる可能性もあります。こちらは分散投資の効果も期待できます。
  3. 保険商品を利用した運用 – 生命保険金は相続財産の非課税枠とは別に500万円×法定相続人の人数の非課税枠があります。たとえば、配偶者とお子さんが2人でしたら法定相続人3人ですので、1500万円の非課税枠があります。この生命保険のみなし相続財産の非課税枠を使えば、一時払いの保険商品などを使って、しっかり運用しながら、大きな節税効果が期待できます。

このように運用を考えるときに、相続の視点を入れてみると、のちのちの相続税がかなり変わってきます。

まとめ:年代に応じた老後資産準備の重要性

低金利と物価上昇が続く現在の経済環境では、預貯金だけに頼る老後資産準備では不十分です。各年代に応じた適切な対策を取ることが重要です:

  • 40代:現状把握と目的別の資産運用計画の策定
  • 50代:具体的な数字の確認と使用時期別の資産運用
  • 60代:安定運用への移行と相続対策

資産運用は一朝一夕にできるものではありません。早い段階から計画的に取り組み、定期的に見直しを行うことが、失敗しない老後資産準備の鍵となります。自分の状況に合った資産運用戦略を立て、着実に実行していきましょう。

年代別に分けて、失敗しない老後の資産準備についてお話してきました。資産運用の重要性が増してきている今、この記事が自分にあった資産運用を考える一助になれば幸いです。

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