高校無償化の真実と隠れ教育費

「高校の費用が無償化されると聞いたけど、どんな仕組みなのかな」。この疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。私立中学に通う生徒の保護者の中には、入学金や授業料、施設費などで年間約125万円を支払い、高等部進学時には授業料が年48万円と約5万円増える見込みに、少しでも負担軽減につながる無償化に期待を寄せる声もあります。

この記事では、2025年度から始まる高校授業料無償化の仕組みと、実際の教育費負担について詳しく解説します。

高校授業料無償化の仕組み

自民党、公明党、日本維新の会が2月末に合意した高校授業料の無償化は、国の就学支援金制度を拡充する形で2025年度から実施されます。

現行制度

現在の就学支援金制度では:

  • 公立・私立問わず、世帯年収910万円未満:年11.88万円
  • 私立高校に通う世帯(年収590万円未満):年39.6万円(上限)

これらの支給額はいずれも返済不要です。

拡充計画(2段階)

  1. 2025年度:年収910万円の制限を撤廃し、全世帯を対象に年11.88万円を支給
  2. 2026年度:私立高校への支援において、所得制限を完全に廃止し、支給上限を39.6万円から全国の私立校平均の45.7万円に引上げ

自治体独自の支援制度

一部の自治体では国の就学支援金に上乗せする独自制度を導入し、所得制限の撤廃に先行して動いています:

  • 東京都:2024年度から年収910万円の要件を外し、全世帯を対象に都私立高の平均授業料(2025年度は年49万円)を上限に支給
  • 大阪府:2024年度に高校3年生で所得制限を撤廃し、最大63万円の支援を開始。2026年度までに全学年に対象を広げ、国の45.7万円との差額を上乗せ

無償化の限界と「隠れ教育費」

重要なのは、国・自治体の支援は授業料のみが対象であり、高校で必要な費用すべてが無償になるわけではないという点です。

文部科学省が2023年12月に発表した「子供の学習費調査」によると: 私立高で教育を受けるため保護者が1年間に支出した「学校教育費」は2023年度で子ども1人あたり76.6万円。このうち授業料は23.3万円で全体の3割に過ぎません。

つまり、無償化の拡充で負担は軽減されますが、残りの7割(53.3万円)は引き続き家庭で賄う必要があります。教育専門家からは「政策で無償対象にならない費目は『隠れ教育費』ともいえる」との指摘があり、「積み重なると大きな負担になりやすい」と警鐘が鳴らされています。

「隠れ教育費」の内訳

では、授業料以外にどのような費用がかかるのでしょうか?

1. 通学関係費

私立高の通学関係費は年間14.2万円と、公立校の9.7万円を上回ります。内訳は:

  • 通学費(定期代など):8.6万円(60%以上)
  • 制服代・通学用品費:5.6万円

教育関係者によると「特徴のある私学の教育を受けるためなら、交通費が多少かさんでも通わせたいと考える親は少なくない」との声があります。

2. 制服費

私立高の制服代は平均4.2万円と公立高の2.8万円より高額です。デザインが凝っていたり、学校の校章入りだったりするため高くなりがちです。

ある私立高校の例では:

  • 夏・冬服のセット:6万5000円
  • ブラウス追加(基本セットには1枚のみ含まれる)
  • 防寒用の指定ベストやセーターは別売り
  • ブラウス3枚、ベスト・セーター1着ずつ追加すると:合計8万円前後

3. 学校納付金等

私立高の学校納付金等は年間11.2万円で、公立の3.5万円の3倍以上です。主な内訳:

  • 施設整備費:5.4万円
  • 生徒会費、PTA会費など:5.8万円

専門家によると「私学の独自性を打ち出すため最新鋭のデジタル機器を導入したり、運動施設を調えたりすることなどに充てる傾向が強い」と指摘されています。

増加する施設整備費

施設整備費は学校により「施設費」「維持費」「教育充実費」など名称が様々です。東京都の調査によると、2025年度の施設整備費などの「その他」の平均額は年19.7万円と、2015年度に比べ3.5万円増加しています。背景には資材費や水道光熱費、教職員確保のための人件費の上昇があります。

普通科で「その他」の納付額が高い学校をみると:

学校名 施設整備費等 特徴
聖徳学園(東京都武蔵野市) 年51.68万円(最高額)
  • データサイエンスコース(2024年度新設)
  • 国際バカロレア(IB)も実施
立教池袋(東京・豊島) 高額な施設整備費 グローバル教育に力を入れ、米国や英国での語学研修などを提供

これらの学校では、特色ある教育プログラムの提供のために高額な施設整備費を設定しています。

無償化による実質的な負担軽減効果

自民、公明両党と維新が合意した無償化が2026年度に実現すると:

  • 東京や大阪など独自支援のある自治体を除き、授業料は高校3年間で最大137.1万円の支援を受けられる
  • 文科省の調査によると、私立と公立の授業料の差は3年間で約56万円

私立高校では学校によって授業料が支援上限を超え、超過分は保護者負担となるケースもありますが、教育関係者からは「費用面で志望先を公立高だけにしていた世帯では、支援拡大で私立高も選択肢になる」との指摘もあります。

ただし、文部科学省調査によると授業料以外の費用は3年間で100万円を超え、学校によってはさらに膨らむケースもあります。進学前に資金計画を慎重に検討することが重要です。

まとめ:無償化の恩恵と限界を理解する

2025年度から始まる高校無償化の拡充は、多くの家庭にとって教育費負担の軽減につながる朗報です。特に、これまで所得制限によって支援を受けられなかった世帯や、費用面から私立高校を選択肢から外していた世帯にとって、選択の幅が広がる可能性があります。

しかし、「無償化」と言っても対象は授業料のみであり、実際の教育費全体の約3割に過ぎないことを理解しておく必要があります。残りの7割は制服代や通学費、施設整備費など「隠れ教育費」として家庭が負担することになります。

高校選びを考える際には、以下のポイントを押さえておきましょう:

  1. 授業料だけでなく、学校納付金や通学費、制服代なども含めた総合的な費用を確認する
  2. 学校説明会や資料で、入学時だけでなく在学中にかかる費用を詳細に調べる
  3. 国の就学支援金に加え、自治体独自の支援制度も確認する
  4. 3年間の総費用を見据えた資金計画を立てる

支援制度を賢く活用しながら、生徒の未来のために最適な教育環境を選択していくことが大切です。

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